はじめに - iOSとWebXRの現状
WebXR Device APIは、ウェブブラウザ上でVR/AR体験を提供するための標準技術です。しかし、iOSのSafariブラウザはWebXR(特にimmersive-arモード)を直接サポートしていません。
これはAppleがARKitというネイティブフレームワークを推進しているためと考えられていますが、Web開発者にとっては大きな課題でした。しかし、App Clipという仕組みを活用することで、この制約を回避できることが判明しています。
App Clipとは?
App Clipは、Appleが提供する**「インストール不要のミニアプリ」**機能です。
- App Storeからフルインストール不要
- QRコードやNFCタグ、ウェブリンクをタップするだけで素早く起動
- 容量は15MB以下に制限されているため、ほぼ「一瞬」で利用開始可能
- ネイティブアプリの一部として動作するため、ARKitなどのDevice APIにアクセス可能
この特性を利用して、App ClipをWebXRの**「シム(Shim)」「ポリフィル(Polyfill)」**として活用する手法が生まれました。
なぜApp ClipでWebXRが動くのか - 技術的な仕組み
App Clipを使ったWebXR実現の基本的なアーキテクチャは以下の通りです:

- ARKit(ネイティブAR機能)が背景で動作 - カメラ映像の取得、平面検出、ヒットテストなどを担当
- その上に透明なWKWebView(ブラウザ画面)を重ねる - WebXRコンテンツを表示
window.xrにポリフィルを注入 - カメラ画像、ヒットテスト結果、デバイスの位置情報などをJavaScriptから利用可能に
つまり、App Clip自体は非常に軽量なままで、実質的にWebXRコンテンツをARKit上で動かすことができます。
「後ろにSwiftのARKit、前にSafari WebViewを表示しているだけのiOSアプリ」というシンプルな構成です。
実際に試してみた
まずは「本当に動くのか?」をお見せします!実際にiPhoneでEyeJackを使ってWebXRを体験してみました。
Step 1: EyeJackのリンクにアクセス
iPhoneのSafariで以下のURLにアクセスします:
デモURL:https://play.eyejack.xyz/link/?url=https://threejs.org/examples/webxr_ar_hittest.html


リンクをタップすると、App Clipのバナーが表示される。「開く」をタップ!
Step 2: App Clipが起動・カメラ権限を許可
「開く」をタップすると、App Clipが自動的にダウンロードされ、数秒で起動します。

App Clipが起動中。インストール不要で数秒で立ち上がる!
カメラ権限を許可すると、ARモードが開始されます。
Step 3: Three.js Hit-Testデモを体験
カメラ権限を許可すると、Three.jsのHit-Testデモが起動します。「START AR」ボタンをタップしてARモードを開始します。

画面をタップすると、検出された平面上にオブジェクトが配置されます。ちゃんと動いた!

試した感想
- App Clipは本当に一瞬で起動する(インストール不要の恩恵)
利用可能なソリューション
EyeJack以外にも、iOSでWebXRを動かすためのソリューションがいくつかあります。
1. EyeJack(Play AR)- 無料で試せる
EyeJackは、上で試したApp Clipを利用してWebXRをiOSで起動させるためのサービスです。
- 無料で利用可能
- URLを渡すだけでiOSでAR体験を提供
- 例:Three.js AR Hit-Testデモ
Three.jsのhit-testデモや、XR Dinosaurs(GLBモデルとアニメーション)など、様々なWebXRコンテンツが動作確認されています。
※ ロゴとアイコン(目のマーク)が少し不気味という声もありますが、機能面では問題なく動作します。
2. Variant Launch - 商用向け
Variant Launchは、商用向けのApp Clipソリューションです。
- PlayCanvasなどの開発環境との連携が可能
- 企業向けのサポートとカスタマイズ
- ブランドに合わせたApp Clipのカスタマイズ
まとめ
iOSでWebXRを動かすためのApp Clip技術のポイントをまとめます:
- Safari単体ではWebXR ARは動かない - Appleの方針
- App Clipがポリフィルとして機能 - ARKit + WebViewの組み合わせ
- EyeJackで今すぐ無料体験可能 - 商用にはVariant Launchなども
- 自作も技術的には可能 - ただしApp Store登録が必要
WebXR開発者にとって、iOSは長らく「鬼門」でしたが、App Clipの活用により道が開けています。ぜひ試してみてください!

